今日は、聖ラウレンティウスの祝日です。
スペインではサン・ロレンソの名で親しまれる聖人です。3世紀にスペインで生まれた後、ローマ帝国で助祭として活躍しました。キリスト教信仰が禁じられていた時代に、火あぶりの刑に処されますが、鉄格子の上で焼かれながらも、彼を処刑する兵士に対して「片側が焼けていません」と言い放ったエピソードで知られています。町に充満する、サン・ロレンソが焼かれる匂いを消すために、人びとはバジルを撒いたと言われています。
ウエスカはサン・ロレンソの出身地です。町の第一守護聖人であり、ウエスカ出身の人にはロレンソという名前の人がたくさんいます。市内には聖人を祀る教会があり、そのファザードは彼の殉教のシンボルマークである鉄格子の形をしています。毎年、8月9日から1週間にわたって、ウエスカ市ではサン・ロレンソ祭りが開催されます。ウエスカ市で一番重要で、大きなお祭りです。お祭り期間中の「正装」は緑のスカーフです。聖人が殉教を象徴するバジルの色がその由来です。
お祭り期間には様々なイベントが開催されます。市庁舎前の広場で行われる開会式では若者が赤ワインを浴びせ合ってお祭りの始まりを祝います。スペインのお祭りには欠かせない闘牛はもちろん、聖人への献花、伝統舞踏ホタの発表会など、街中は連日大賑わいです。
今年はコロナウィルスの影響で、お祭りは中止になりました。開会式が行われるはずだった昨日(9日)正午には、開会を告げる打ち上げ花火が市内に響きました。ウエスカ市民は家のバルコニーに緑のスカーフをくくり、静かにお祭りを祝います。イベントは中止になりましたが、コミーダ・ファミリアル(家族が集まっての昼食)は行われます。
スペインのお祭りでは、そのお祭りを象徴するメニューがあります。サン・ロレンソ祭りの場合も例外ではありません。前菜は生ハムメロン、メインは鶏肉のトマト煮込み、デザートは黄桃のワイン漬けです。各家庭に秘伝のレシピがあり、同じ料理でもその味は家庭によって様々です。
街中は静かです。しかし、このメニューを食べると、今年もサン・ロレンソの日を迎えたことを実感します。